LASIKクリニカルガイダンス

近視矯正手術の原理
近視を理解するために,まずどのようにして物が見えているのか簡単に説明します.目に入った光は角膜という透明な膜,次に水晶体(レンズ)を通過し,網膜というカメラのフィルムにあたる部分で像を結びます.近視では,網膜よりも前で焦点を結んでしまうため,像がぼやけて見えるのです.近視矯正手術のほとんどは,この角膜のカーブを平らにすることで屈折力を変え,目に入った光が網膜上で像を結ぶようにするものです.現在行なわれている方法とて,RK(radialkeratotomy)という角膜をダイアモンドナイフで放射状に切開する方法と,エキシマレーザーを用いたPRK(photorefractivekeratectomy)と,LASIKがあります.他に角膜にリングを入れる方法(ICRS)や眼内にレンズを入れる方法(phakicIOL)などもあります.
LASIK
エキシマレーザーを使う方法として最初に登場したPRKは,アメリカで認可を受け,当院でも一部の患者様に行なっています.この方法は,角膜の一番表面にある角膜上皮をレーザーで剥いでから更にその下の角膜実質をレーザーで削ることで形状を変えます.非常に良い手術効果が得られますが,この角膜上皮がもとに戻るまで痛みや異物感,また視力が不安定という欠点がありました.最近登場したLASIKは,この角膜上皮をそのまま残せる手術です.実際の方法は,角膜の表面を90-120ミクロンといった0.2mにも満たない厚さで削って蓋(フラップ)の部分を作ります.そしてフラップの下の角膜をエキシマレーザーでPRK同様に削り,再びフラップを元の位置に戻します.このため,PRK後におこりうる術後の痛みや,角膜の濁り(ヘイズ)も稀です.
LASIKの適応
適応とは,LASIK手術が適しているかどうかです.主に近視が対象ですが,乱視や遠視にも行えます.まず,眼科医に眼に他の病気がないか,またこの手術で視力向上が期待できるかを診てもらう必要があります.角膜の精密検査で特殊な乱視があったり,角膜が非常に薄い場合,また角膜以外の水晶体や網膜に異常がないか,子供のころから視力が出にくい弱視はないかなどの検査を行います.これらの問題がなければLASIKを受けることができます.また,18歳未満の人,この1年間で屈折度数が不安定な人,眼や全身に手術に影響するよう病気がある人,手術中協力が得られない人は適応外となります.さらに妊娠している人やこの1年で妊娠を希望している人も適応外で,出産が終わって落ち着いてからとなります。
老視の理解
老眼は,40歳半ばから出てくることが多いです.どの屈折矯正手術でも同じですが,近視を治してしまうと老眼になった場合に老眼鏡が必要となります.もともと弱めの近視だった人は,老眼になると,今度は近くが見やすいという利点がありますから,このことを必ず一回考えて下さい.ただし,老眼の年齢に達した患者様の場合は,この辺を調整して近視を少し残すように手術することも可能です.
手術前の注意事項
コンタクトレンズを使用している人は,正確な角膜の状態を知るために,手術前には一定期間以上コンタクトレンズをはずしておく必要があります.手術前日からはコンタクトレンズを使用しないで,眼鏡を使用しておいて下さい.また,手術前日から目の中を清潔に保つために,抗菌目薬を1日4回点眼していただきます。
手術当日の注意事項
手術当日は,通常に食事をしてきてかまいません.女性は化粧品の粉などが目に入ることもあるので,お化粧はしないで下さい.またエキシマレーザーはアルコールや強い香りに弱いので,香水やオーデコロン,男性はアフターシエーブなどは避けて下さい.手術は普段着のままですが,横になるので楽な服装がいいでしょう。
実際の手術方法
麻酔は点眼薬で,これで痛みはとれますが.多少触れている感じや圧迫感はあります.眼とその周りを消毒してから,エキシマレーザーに付属しているベットに横になります.睦毛が邪魔にならないようにカバーしてから開瞼器で眼を開きます.麻酔がきいているので痛みは感じません.次に吸引リングをのせ眼球が動かないように固定します.この際,一時的に眼圧が上り,見にくくなりますが心配いりません.次にフェムトセカンドレーザーという器械で角膜フラップを作り,この下にエキシマレーザーを照射します.緑の固視ランプを見るようにしますが,見えにくくとも,キョロキョロしないで一点を見るつもりでいて下さい.この後,角膜フラップをもとにもどし終了です.フラップは縫わなくとも自然につき,まばたきをしても大丈夫です.手術は約10分で終了しますが,手術後の診察で,角膜フラップがちゃんとついているか,また異物などが入っていないかを調べます.もしフラップがうまくついていなかったり,間に何か入っている場合は,ベッドにもどり洗浄などをします。
手術当日の注意事項
手術当日の就寝時は,誤って目に手が触れないようにカバーしておきます.寝ている間にこすってしまう人があるので,当日夜はこのカバーをしておいた方が安心です.また,視力が完全でないので,車の運転は避けて下さい.痛みはありませんが,多少ゴロゴロしたり,しみるような感じがしますが心配いりません.シャワーも可能ですが,眼に水が入らないように注意し,お化粧は翌日の検査が終わるまでしないで下さい。
手術後の診察
手術翌日は必ず診察が必要です.その後は1週間,1カ月,3カ月,6カ月,1年後に定期検査があります.ただし,傷の治り方に個人差があるので,これより回数が増えることもあります.手術翌日から通常の生活に戻れますが,眼を押したり,こすったりする危険性のあることや水泳は2週間位さけて下さい。
予測される合併症・LASIKで起こりうる問題
誰もが一番心配なのは,この手術の確実性または安全性でしょう.この手術は,良好な結果が得られていますが,以下に稀ですが,起こりうる問題点をあげます.ことを了解していただき,LASIK同意書にサインしていただく必要があります。
他の眼疾患への影響 手術時に眼球が動かないように,かつ角膜フラップを作りやすいように眼圧が一時的に上昇します.短時間のため問題ないのですが,もともと緑内障があったり,眼底に出血などがあるとこれらが増悪することがあるので,事前に検査しておきます.
術中フラップ作成時における問題 角膜フラップを作る際,薄すぎたり,完全に切れてしまうことがあります.手術続行が可能な場合と,手術を中断して約3カ月後にもう1回やり直した方が良い場合があります.また,角膜フラップを元の位置に戻した後に誤ってこすってしまうと,ズレたり,ひどい場合はなくなってしまうことがあります.このためにも翌日の診察は必要です。
術後屈折矯正度数の予測性の問題  エキシマレーザーは,かなり改良され非常に良好な成績が得られていますが,矯正度数が予定よりも少なかったり,多くなることがあり得ます.この場合は眼鏡やコンタクトレンズでほとんどの場合,問題なく矯正できますが,しばらく様子を見て追加矯正することもあります.また,レーザーで角膜を削るので不正な乱視が出ることもあります。
フラップ下への細胞の迷入と感染症 角膜に切開を入れるので,フラップとの間に細胞が入り角膜の濁りの原因になることがあります.また,感染の危険性もあります.フラップとの間の異物は洗浄して除去することが可能ですが,感染すると入院治療が必要となることもあります。
DLK(diffuselamellerKeraitis) 極希に、原因不明の角膜フラップ下の炎症が生じることがあります.点眼薬の変更や,結膜(白目)下への注射、角膜フラップ下の再洗浄が必要なこともあります.
術後ドライアイの問題  手術後の見え方ですが,ほとんどの場合,翌日から裸眼で手術前よりも見えるようになります.フラップを作成時,一時的に神経は切断され角膜の知覚が落ちるため涙液の分泌が減少しドライアイになる場合があります.日常生活には問題ない場合がほとんどですが,シヨボツキ感と何となく見えにくいと感じる場合もあります.3-6ケ月で通常はもとに戻りますが、ドライアイの治療を要す場合もあります.
近視の戻り、視力の質の問題 手術後の安定はよいとされていますが,わずかに元に戻る人があります.視力の質としては,矯正視力が1段階または2段階低下する場合や,慣れて問題なくなることがほとんどですが,夜に電灯などの光をまぶしく感じたりするグレアを訴えることがあります.

LASIK同意書

  • 私はクリニカルガイダンスを読みました。
  • 私は担当医とLASIKについて話し合い、質問する機会が得られ、質問に対する答えに納得しています。
  • 私は以下を了承しています。
  • a.LASIKは自らの希望により受ける手術であり、LASIKを受けなければならない健康上もしくは医療上の理由は特にありません。
  • b.メガネやコンタクトレンズ,更に他の手術方法(RK,PRK,有水晶体眼人工レンズ挿入術)などLASIKに代わる矯正方法があります。
  • c.LASIK手術の効果は必ずしも予測できません。十分なレベルに視力を上げるため手術後にもメガネまたはコンタクトレンズが必要になることがあります。
  • d.LASIK手術は100%安全ではありません。手術により、ガイダンスで述べられている「予測される合併症」が起こることもあり得ます。また、手術に起因する併発症状をすべて予測することは不可能であるため、ガイダンスで述べられている「予測される合併症」のリストは完全ではありません。
  • e.再治療が必要になることもありますが、必ずしも良い結果が得られるとは限りません。
  • f.LASIK手術後は、眼科医による定期検診を受けることが大切です。
  • LASIKを受けるという決定は、私自身が下したことであり、強要はされていません。手術前にLASIKを取りやめたくなった場合には、同意書を取り下げることができます。
  • 私は、担当医に対し、私の術前、術後の医療データを、術後フォローと医療目的のみに共有する権限を与えます。
  • LASIK手術が健康保険や個人の保険の対象外であることを承知しています。術後の点眼処方は自費になることがあります。また手術費用の返金は行なっていません。
  • (右目/左目)のエキシマレーザーによる屈折矯正手術LASIKを希望します。担当眼科医が必要もしくは適当と判断した術前、術後のケアを受けることに同意します。