視力に左右差が生まれてしまうことがありますが、この差が大きすぎると見え方に不具合が生じます。
具体的に2D(ディオプトリー)以上の差がある場合、ガチャ目(不同視)と診断されます。
視力の左右差を自分で確かめることはできないため、ガチャ目に似た症状がある場合は眼科で検査を受けて診断してもらわなくてはいけません。
この記事では、ガチャ目とは具体的にどのような状態なのか解説します。
ガチャ目を引き起こす疾患や治療方法についてもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
ガチャ目(不同視)とは?
ガチャ目とは、視力の左右差によって見え方に不具合が生じてしまうものです。
網膜上で結ばれる像の大きさに左右差があっても、その差がわずかであれば脳でスムーズに処理して違和感なく見ることができます。
しかしこの左右差が大きくなると処理できる限度を超えて、見え方に違和感が生じ、目だけでなく体にも不調をきたす場合があるのです。
具体的には左右の屈折値の度数に2D(ディオプトリー)以上の差があると、ガチャ目(不同視)と診断されます。
この数値の差は眼科で詳しく検査しないと分からないため、次に解説する症状がある方は眼科を受診して検査してみましょう。
ガチャ目がある場合の症状
ガチャ目がある場合の症状として、以下の4つが挙げられます。
- ものが二重に見える
- めまい・頭痛・吐き気・肩こりなどが生じる
- 目が疲れやすい
- 距離感がつかみにくい
ここでは上記4つの症状についてそれぞれ解説します。
ものが二重に見える
左右の屈折値の度数の差が大きくなると、ものが二重に見えることがあります。
この症状は『複視』と呼ばれるもので、片目で見た際に二重に見える単眼複視と両目で見た際に二重に見える両眼複視の2種類があります。
複視はガチャ目のほかにも、遠視、近視、乱視、白内障などで起こることが多いです。
また突然複視が起きた場合、脳神経障害や脳卒中も疑われるため、激しい頭痛やめまいを伴う場合はすぐに医療機関を受診しましょう。
めまい・頭痛・吐き気・肩こりなどが生じる
ガチャ目によってめまいや頭痛、吐き気、肩こりなどが生じる場合があります。
左右の視力に差があると、ピントを細かく調整するために毛様体筋の弛緩と収縮を繰り返す状態になります。
毛様体が弛緩と収縮を繰り返すと目に強い負担がかかり、そこから眼精疲労や頭痛、目の奥の痛みなどを引き起こすことがあるのです。
眼精疲労が悪化すると吐き気や肩こりなどの症状が出る場合もあります。
身体全体に症状が広がってしまうため、なるべく早めに対処することが大切です。
目が疲れやすい
視力の左右差が生じると、目が疲れやすくなります。
左右差が大きくなると目の疲労感だけでなく、めまいや頭痛などの症状が現れるようになります。
距離感がつかみにくい
視力に左右差があると立体視ができなくなり、距離感がつかみにくくなります。
人間は2つの目でものを見ることによって奥行きや高さ、距離などを把握していますが、視力に左右差があると片目でものを見ているような感覚になるのです。
片目で見ると奥行きや高さなどが正確に把握できなくなるため、針に糸を通すなど立体的にものを見る行動が難しくなります。
また立体視ができなくなるほかにも、小視症(ものが小さくみえる)・大視症(ものが大きく見える)・変視症(ものが歪んで見える)なども起こります。
ガチャ目を引き起こす疾患とは
ガチャ目を引き起こす疾患には以下のようなものが挙げられます。
- 屈折異常
- 角膜乱視
- 弱視
- 網膜剥離
- 白内障
- 緑内障
- 網膜静脈閉塞症
ここでは上記7つの疾患についてそれぞれ解説します。
屈折異常
屈折異常は、角膜と水晶体で光が屈折する力と網膜までの距離が合わなくなり、ピンボケしてしまう状態です。
症状によって近視・遠視・乱視の3つに分けられます。
症状 | 原因 | |
---|---|---|
近視 | 目に入った光が網膜の前で像を結ぶ状態 | 角膜や水晶体の屈折力が強い
眼球が長い |
遠視 | 目に入った光が網膜の後ろで像を結ぶ状態 | 角膜や水晶体の屈折力が弱い
眼球が短い |
乱視 | 目に入った光が網膜のどこにも像を結ばない状態 | 角膜や水晶体の形状が不規則 |
また上記のほか、加齢とともに水晶体が固くなることで調節力が弱まる老視(老眼)もあります。
近視・遠視・乱視を診断するためには角膜や水晶体の屈折力、角膜の形、眼球の長さなどを検査する必要があるため、上記に当てはまる症状がある方は眼科を受診しましょう。
角膜乱視
角膜乱視は、目の表面の角膜部分にある乱視です。
先天性と後天性があり、先天性の角膜乱視の原因は、母親の胎内にいるときの胎児の状態と出産時の対処によるものです。
後天性の角膜乱視は、目を細めることにより眼球に負担がかかり引き起こされることがあります。
近視初期に遠くを見るために目を細めると、目の周辺部の筋肉の力で角膜が押しつぶされ、変形してしまうのです。
角膜が押しつぶされて形状が不規則になることで、角膜乱視になります。
ハードコンタクトレンズを使用することで、角膜乱視を補正することが可能です。
弱視
弱視は眼鏡やコンタクトレンズを使用しても視力が1.0以上にならない状態のことで、両目または片目のみに発症する疾患です。
弱視は主に以下の4つのタイプに分類されます。
- 屈折異常弱視:強い屈折異常によりピントが合わず視力が成長できない状態
- 不同視弱視:屈折異常による左右差が原因で生じる片眼性の視力障害
- 斜視弱視:斜視によって網膜の中心部分でものを見れないために視力が成長せず弱視になっている状態
- 形態覚遮断弱視:乳幼児期に先天白内障・角膜混濁・眼瞼下垂などが原因により網膜に適切な刺激が得られなかったために視力の発達ができていない状態
弱視の主な原因として屈折異常や斜視、左右の視力差、眼瞼下垂、水晶体の濁りなどが挙げられます。
弱視は視覚の感受性が高い年齢(10歳まで)のうちに、適切な治療を行わなくてはいけません。
感受性期の高い年齢のうちにしっかり視覚刺激を得ないと通常よりも物を見る力全般の成長に遅れが生じる可能性があります。
可能な限り早いうちから治療を開始することが大切です。
網膜剥離
網膜剥離は、網膜に穴が開いてその周囲の網膜が剥がれてしまう疾患です。
放置しておくと網膜がはがれる範囲が拡大し、最悪の場合失明してしまうこともあります。
網膜剥離の主な症状は以下の通りです。
- 視界に黒い糸くずのようなものが見える
- 黒い影が見える
- 視力低下を起こしている
- 何もないところで光を感じる
- 視野が欠損している
加齢により硝子体(眼球の内部の大部分を満たす無色透明のゼリー状のもの)が剥離することが原因で網膜剥離が引き起こされることが多いです。
硝子体剥離は糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症などの目の病気のほか、頭部・眼球への物理的外傷などにより発症します。
網膜の一部が硝子体により引っ張られると、網膜に小さな穴ができ、この穴から網膜とその下の層との間に水分が入り込んで網膜がはがれる範囲が徐々に広がっていってしまうのです。
網膜に小さな穴が開いた状態を早期に発見できれば、穴のまわりに光凝固を行うことで網膜剥離の拡大を抑えられます。
白内障
白内障は、眼の中の水晶体というレンズが濁ってくる疾患です。
水晶体のたんぱく質が変化することによって生じるもので、以下のように4つの種類があります。
- 加齢性(老人性)白内障:加齢により発症する白内障
- 先天性白内障:遺伝などにより生まれつき水晶体が濁っている白内障
- 若年性白内障:眼科疾患や糖尿病・アトピー性皮膚炎などの疾患、治療薬が原因で発症する白内障
- 外傷性白内障:目への強い衝撃によって水晶体が濁る白内障
加齢によって発症するケースが多く、自覚症状が現れていない方も含めると80歳以上はほとんどの方が白内障になっているとされます。
白内障の主な症状は以下の通りです。
- 視野全体が白っぽく映る
- 目がかすんだりぼやけたりする
- ものが二重に見える
- 視力が急激に低下する
- 光がまぶしく感じる
- 色調が沈んで見える
日常生活に支障が出ていない場合は点眼薬による治療が可能ですが、一度濁った水晶体を綺麗にすることはできず、症状の進行をおさえるだけとなります。
日常生活に支障が出ている場合は手術により水晶体を取り除き、人工のレンズを挿入します。
手術を行うことで視力を改善することが可能です。
緑内障
緑内障は、眼圧の上昇によって視神経の働きに悪影響が出て、視野が狭くなったり視界の一部分が見えなくなったりしてしまう疾患です。
緩やかに症状が進行していくため、発見が遅れてしまうケースも少なくありません。
緑内障のはっきりとした原因は未だ分かっていませんが、眼圧の上昇が影響していると考えられています。
眼圧が高い状態が続くと視覚情報を脳へ正しく伝達できなくなり、視野障害を発症してしまいますが、どの程度の眼圧上昇により緑内障を発症するかは個人差があります。
また眼圧が正常範囲内でも緑内障と同様の症状を起こす正常眼圧緑内障というものもあり、日本人の場合はこちらの方が多いです。
緑内障は以下の5つのうちいずれかに分類されます。
原発開放隅角緑内障 | 隅角(角膜と虹彩が交わる部分)は閉塞せずに繊維柱帯(隅角にあるフィルター)が詰まることにより眼圧が上昇して発症する緑内障 |
---|---|
原発閉塞隅角緑内障 | 眼球から房水が出てくる隅角が狭まったり閉塞したりすることにより眼圧が上昇して発症する緑内障 |
正常眼圧緑内障 | 眼圧が正常値であるにもかかわらず発症する緑内障 |
発達緑内障 | 生まれつき隅角が未発達なことにより生じる先天性の緑内障 |
続発緑内障 | 目が強い衝撃や外傷を受けたり、眼科疾患や糖尿病などの病気になったりすることで眼圧が上昇して発症する緑内障 |
緑内障の症状が疑われる場合、眼科で眼圧検査や眼底検査、視野検査などの各種検査を受ける必要があります。
網膜静脈閉塞症
網膜静脈閉塞症は、網膜内の静脈の血流が血栓によって詰まることで引き起こされる疾患です。
主に以下のような症状が現れます。
- 急激に視力が低下する
- ものが歪んで見える
- 視界が歪んで見える
- 目がかすむ
網膜静脈閉塞症は高血圧や糖尿病、高脂血症などにより、網膜内の動脈の壁が厚く硬化することで静脈が圧迫され、血流が滞ることで引き起こされます。
動脈硬化は高血圧により生じやすいため、高血圧になりやすい中高年以降に発症する場合が多いです。
また閉塞が起きた静脈の部位により、網膜中心静脈閉塞症と網膜静脈分岐閉塞症の2つに分けられます。
いずれも生活習慣の乱れが主な原因となるため、まずは生活習慣の改善が必要です。
生活習慣の改善と並行しながら、薬物療法で高血圧や脂質異常症の改善を図り治療を行います。
ガチャ目の治療方法
ガチャ目の治療方法は眼鏡とコンタクトレンズの2つが挙げられます。それぞれ詳しく紹介します。
眼鏡
ガチャ目の症状が比較的軽度の場合、眼鏡の装用により視力の矯正を行います。
ガチャ目の症状が強い場合に眼鏡を使用すると、目とレンズの距離が離れていることから光が網膜まで届くまでにもののサイズが変わってしまい、違和感が生じてしまいます。
眼鏡で矯正が難しい場合は、コンタクトレンズによる矯正を検討する必要があるでしょう。
コンタクトレンズ
ガチャ目の症状が比較的強い場合は、コンタクトレンズの装用により視力の矯正を行います。
コンタクトレンズは目に直接装用するため、目とレンズの間に距離がなく、眼鏡と比べて像の大きさに左右差ができにくい特徴があります。
片方の目にのみ装用することも可能なため、片目のみの矯正が必要な場合はコンタクトレンズを選択する場合が多いです。
まとめ
ガチャ目とは、視力の左右差によって見え方に不具合が生じてしまう疾患です。
ものが二重に見えたり、目が疲れやすくなったり、距離感がつかみにくくなったり、めまい・頭痛・吐き気・肩こりなどの症状が現れたりします。
ガチャ目を引き起こす疾患として、屈折異常や角膜乱視、網膜剥離、弱視、白内障、緑内障、網膜静脈閉塞症などが挙げられます。
ガチャ目は眼鏡やコンタクトレンズの使用により治療可能です。
大塚眼科クリニックでは白内障や緑内障、屈折矯正など幅広い治療に対応しています。
眼鏡やコンタクトレンズの処方も可能なため、ガチャ目と似たような症状でお悩みの方はぜひ一度ご来院ください。