
近視や乱視、遠視など視力のお悩みを改善する方法として、ICL(眼内コンタクトレンズ)とレーシックがともに注目されています。
どちらも視力回復の効果が期待できますが、その仕組みや特徴、リスク、適応条件などには異なる点が多いのをご存じでしょうか。
この記事では、ICLとレーシックの特徴やメリット・デメリット、それぞれの項目についての比較、選び方のポイントまでを詳しく解説します。
視力矯正手術を検討している方や、ICLとレーシックの選び方を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
ICL(眼内コンタクトレンズ)とは
ICLとは「Implantable contact lens(有水晶体後房レンズ)」の略で、角膜を削らず眼内にレンズを挿入する視力矯正手術のひとつです。
日本では2010年2月に厚生労働省より認可を受けています。
(医療機器製造販売承認番号:22200BZY00001000)
生体適合性が高いコラマーが素材に使われていて、目の中で異物として認識されにくいため、長期間レンズ機能を持続できます。
ICLの特徴
ICL手術は点眼麻酔で行われて、約3mm切開してレンズを挿入し、虹彩と水晶体の間に固定します。
日帰り手術が可能で、術後の回復も比較的早いのも特徴のひとつです。
角膜を削らないため可逆性があり、レンズを取り出せば元に戻すことができます。
将来的に白内障や目の病気になっても、取り出して治療や手術が可能です。
レンズには紫外線カット機能がついていて、さまざまな目の病気を引き起こす原因になる紫外線から目を守れます。
一度挿入すれば毎日の手入れの必要がなく、裸眼で生活できることは、視力にお悩みの方にとって魅力的な点でしょう。
ICLのメリット
ICLのメリットには、以下のようなものが挙げられます。
- 適応範囲が広い
- 近視は-6.0D〜-18.0D(-15.0以上または-3.0~-6.0D未満の中等度近視は慎重対応)
- 乱視は4.5D以内
- 視力の質が高い
- ドライアイが少ない
- 白内障手術と併用できる
- 可逆性があり、レンズ交換が可能
- 視力の左右差があっても矯正可能
適応範囲が広いため、レーシックができなかった方もICL手術ができる可能性があります。
ただし、リスクや他の疾患により難しいこともあるため、心配な場合は適応検査を受けて医師に相談してみましょう。
ICLのデメリット
ICLのデメリットは、以下の通りです。
- 保険適用外で自費診療のため費用が高額になる
- まれに合併症(術後眼内炎、眼圧上昇、白内障、角膜内皮細胞減少、眼球内出血など)が起こる
- ハロー・グレアが起こる可能性がある
- オーダーメイドのため国内在庫によっては手術までの待機時間が長くなることがある
ICLの費用はクリニックにより異なりますが、両目で60~100万円が目安です。
合併症が起こることはまれで、術後眼内炎(感染症)の発症率は0.0167%(1/6000例)との報告があります。
ハロー(光の輪が見える)・グレア(光がギラギラまぶしく見える)は夜間によく見られ、ほとんどは時間が経つと気にならなくなりますが、長引く場合は医師に相談しましょう。
レーシックとは
レーシックとは、角膜をレーザーで削って屈折力を調整して、視力を矯正する手術です。
視力の回復が早く、日帰り手術で対応できます。
術後に裸眼で生活できる点はICLと共通しますが、角膜の状態によっては不適合となる可能性があるため注意が必要です。
レーシックの特徴
レーシックの手術もICLと同様に点眼麻酔で行われ、レーザーを照射する時間は数十秒で、手術時間は両目で約20分です。
角膜の形を変えることで屈折力を調整し、軽度から中程度の近視や乱視、遠視を改善して焦点を合わせられるようにします。
角膜の形状や厚みが基準に満たない場合は、手術が受けられません。
短時間で終わり、翌日には視力回復を実感する方が多いのも特徴のひとつです。
レーシックのメリット
レーシックのメリットは、以下のようなものが挙げられます。
- 手術費用が抑えられる
- 手術後の視力回復が早い
- 軽度~中程度の近視に効果が期待できる
- 治療実績が多い
- 手術中から術後にかけての痛みが少ない
レーシックは自費診療ですが、両目で約30~50万円目安でICLと比較すると安価で受けられます。
中等度(-6.0D)までに適応されますが、-10.0Dまでは慎重に対応することで手術可能なケースもあります。
日本では1990年代から行われてきた手術で、実績が多く技術が確立されています。
(参照:「屈折矯正手術のガイドライン(第8版)」日本眼科学会屈折矯正委員会)
レーシックのデメリット
レーシックのデメリットは、以下の通りです。
- 角膜を削るため、不可逆的で元に戻すことができない
- 適応範囲が比較的狭い
- 近視の戻りが起こることがある
- ドライアイやハロー・グレアが起こることがある
- 加齢に伴う視力変化(老眼や白内障、緑内障などの病気)には対応しにくい
レーシックは角膜を直接削って変形させるため、復元できないデメリットがあります。
強度近視や角膜が薄い方は、適応範囲外となりレーシックの手術が受けられない場合があり、ICLよりも条件が厳しい手術です。
手術後数年経って、近視が戻ったり、再発したりするリスクがあります。
角膜の形状変化や生活習慣によるものなどとされていますが、原因ははっきりとはわかっていません。
角膜を削ることでドライアイやハロー・グレアが起こることもありますが、数ヶ月~1年以内に改善することが多いとされています。
老眼対応のレーシック手術もありますが、効果に個人差があるため、適応するか検査が必要です。
また、将来的に白内障や緑内障を患ったとき、レーシックをしていても治療自体はできますが、眼圧の測定精度に影響が出ることがあるため、治療前に必ず医師に申告しましょう。
ICLとレーシックの違い
ICLとレーシックの違いを、以下の表にまとめました。
ICL(眼内コンタクトレンズ) | レーシック | |
---|---|---|
見え方 | クリアで自然な視界 | コントラストや質に影響が出る可能性がある |
安定性 | 長期的に安定した視力が続く | まれに近視の戻りが発生することがある |
適応範囲 | 適応範囲が広い | 強度近視や角膜の形状により受けられないことがある |
可逆性 | あり。取り出しや交換が可能 | なし。元に戻すことはできない |
手術方法 | 虹彩と水晶体の間(後房)に特殊なレンズを挿入する | 角膜をレーザーで削って変形させて屈折力を調整する |
老眼対応 | 近くは老眼鏡で対応すればICL手術は可能 | 左右の屈折力を変えることで対応することはできるが、限界がある |
費用目安 | 両目で約60~100万円 | 両目で約30~50万円 |
リスク | 感染症・合併症・ハロー・グレア・白内障発症・眼圧上昇など | 合併症・ドライアイ・近視戻り・ハロー・グレアなど |
ここからは、それぞれの項目について詳しく解説します。
見え方
ICLの見え方は、クリアで自然な視界です。
光の通り道が自然に近いため、立体感があり夜間の視界も良い傾向があります。
レーシックは角膜を削って構造を変えるため、コントラスト感度が低下したり、暗所でハロー・グレアが起こりやすくなる可能性があります。
安定性
ICLはレンズを挿入するだけで角膜を変形させないため、術後の視力変化が少なく、長期的に安定した視力が期待できます。
レーシックは経年変化によって角膜の状態や近視の進行が起こることがあり、まれに術後数年経ってから近視が戻るケースもあります。
適応範囲
ICLは強度近視や乱視、角膜が薄い方にも対応できる可能性があり、適応範囲が広いのが強みです。
ただし、適応検査結果によってはICLを受けられないこともあるため、事前の検査が重要です。
一方レーシックは、角膜を削るため厚みが基準に満たなかったり、強度近視には対応できなかったりと適応範囲に限りがあります。
可逆性
ICLは可逆性に優れ、レンズの交換や取り出しができるため、選択肢が広がります。
将来的に白内障になった場合も、ICLを取り出して多焦点眼内レンズに交換することが可能です。
レーシックで削った角膜は元に戻すことができないため、正確な眼圧測定や角膜度数の計算が難しくなる可能性があります。
後々目の病気になったときは、レーシックを受けていることを申告して、対応可能な病院を探す必要があります。
手術方法
ICL手術は両目で約20〜30分、来院から帰宅までは約2時間の手術です。
局所麻酔の点眼後、角膜の端を約3mm切開して小さく折りたたまれたレンズを挿入します。
手術当日はぼんやりした視界で翌日以降から少しずつ見えるようになり、1週間ほどで日常生活に不便がない程度に回復しますが、安定するまでは数ヶ月かかることがあります。
レーシックの手術時間は両目で約20分、手術前後を含めて1時間半~2時間ほどで帰宅できて、早くて当日、多くの方が翌日には裸眼で見える視力回復を実感できる手術です。
点眼麻酔後、角膜を保護するフラップを作ってから角膜にレーザーを照射して形を変えて、焦点を合わせられるように屈折率を調整します。
老眼対応
ICLは老眼対応レンズが存在していますが、日本ではまだ承認されていません。(2025年時点)
ICLをすることは可能ですが、遠方は裸眼で、近方は老眼鏡をかけるのが一般的な対応方法です。
レーシックの場合は、老眼対応の手術方法はありますが、限界があります。
左右の目の屈折率を変えて、例えば右は遠方、左は近方を見えるように調節する手術方法です。
しかし、左右差に慣れるのに時間がかかる、効果の感じ方に個人差がある、立体視の低下の可能性があるなどのデメリットもあります。
老眼の原因である水晶体の硬化を治療できないため、レーシック手術をしても老眼は進行し続けていきます。
費用
どちらも保険適用外で自費診療となります。
ICLはクリニックによりますが、両目で60~100万円が目安で、乱視対応レンズはさらに費用がかかります。
レーシックもクリニックにより異なりますが、両目で30~50万円が目安です。
なお、適応検査や術後の定期検診費用などは、クリニックによって含まれる場合と別途必要な場合があるため、事前に確認しておきましょう。
リスク
ICLのリスクは、以下の通りです。
- 術後眼内炎(発症率は0.0167%)
- ハロー・グレア(数ヶ月で気にならなくなることが多い)
- 白内障の発症
- 眼球内出血
- 眼圧上昇
- 角膜内皮細胞減少など
これらのリスクの発症はまれですが、適応検査の慎重な判断と適切な手術、術後の管理でリスクを抑えることが可能です。
レーシックのリスクは、以下の通りです。
- ドライアイ(通常半年~1年ほどで改善)
- ハロー・グレア
- 近視の戻り
- 角膜不正乱視など
ドライアイはほとんどの方で起こる症状ですが、一時的なもので半年~1年ほどで改善することが多いです。
ごくまれに角膜不正乱視が起こる可能性がありますが、この場合は治療やハードコンタクトレンズでの矯正が必要になります。
ICL(眼内コンタクトレンズ)とレーシックの選び方
視力矯正手術を選ぶときは、目の状態や生活スタイルにより選び方が異なります。
ここでは、ICLとレーシックのどちらを選ぶか迷ったときの、選び方のポイントを紹介します。
目の状態で選ぶ
適応範囲の違いでもありますが、目の状態でICLとレーシックのどちらに適しているかが異なります。
角膜が薄い、-10.0D以上の強度近視や強い乱視などの場合、レーシックは不適合になることが多いですが、ICLは適応の可能性もあります。
軽度〜中程度の近視の場合は、レーシックが適応で、ICLは-6.0D以下の近視には慎重に対応するとされています。
ただし、円錐角膜や重度の糖尿病など、どちらも禁忌とされている条件もあるため、医師とよく相談が必要です。
費用で選ぶ
ICLとレーシックを比較して、費用で選ぶのもひとつの方法です。
レーシックの手術は、レンズ費用がかからないため価格が抑えられています。
一方ICLは、費用だけで見たらレンズ費用だけでも高額ですが、長期的に考えると安定しています。
見え方で選ぶ
見え方は、多くの方が選ぶポイントとするところです。
クリアで自然な視界が得られるICLは、メガネやコンタクトレンズよりも鮮明に見えると感じる方もいます。
コントラスト感度も良いため、細かい作業や夜間の運転をする際に満足度が高いでしょう。
また、ハロー・グレアが気になる方は、レーシックで起こりやすいため注意が必要です。
ライフスタイルで選ぶ
どのようなライフスタイルで過ごしているかも、ICLとレーシックを選ぶにあたり重要な要素です。
例えば夜間の運転が多い方や、若年層で将来的な目の病気に備えたい方は、ICLが向いています。
早く効果を実感したい方、休みが取りにくい仕事の方は、回復が早いレーシックが適しています。
目の状態で難しい場合もありますが、どちらか選べるならば、ライフスタイルを意識して医師と相談するのも良いでしょう。
まとめ
ICLとレーシックは手術方法や適応範囲、リスクや費用など、さまざまな違いがあります。
どちらを選ぶか難しい場合は、メリット・デメリットを考慮して、希望の見え方や費用、自分の生活スタイルに合っているかなど、選び方のポイントを参考に検討してみましょう。
事前の検査による適応診断と、信頼できる医師とよく相談して、納得のうえで選択してください。
ICLとレーシックを選ぶにあたり、術後の生活や将来のことも考えて、自分に合った方法を選ぶのが重要です。
タワーリバーク眼科は、ICL手術を検討している患者様に向けて、LINEでご相談やご案内をしております。(レーシックには対応しておりません)
オンライン診療にも対応していますが、適応検査などでご来院の際は川崎駅直結のためアクセスが良い立地です。
ICLとレーシックの違いをもっと知りたい方、ICLをご希望の方は、タワーリバーク眼科へご相談ください。