
「日中は裸眼で過ごしたい」「視力矯正したいが手術は不安」という大人に注目されているのがオルソケラトロジーという視力矯正法です。
オルソケラトロジーは、寝ている間に専用のハードコンタクトレンズを装用することで、日中は裸眼で過ごせるようになります。
子どもの近視抑制に効果があるとされる方法ですが、大人の視力矯正手段として利用する方も少なくありません。
この記事では、大人にとってのオルソケラトロジーの効果やメリット・注意点・治療の流れや費用までわかりやすく解説します。
オルソケラトロジーの仕組み
オルソケラトロジーは、就寝中に特殊なハードコンタクトレンズを装用することで、角膜の形状を一時的に変化させ、近視や軽度の乱視を矯正する視力矯正治療です。
角膜は厚さ約0.5mmの柔らかい組織であり、圧力に対して形状が変わりやすい性質があります。
オルソケラトロジーでは、内側に複数のカーブを持つレンズ(酸素透過性ハードコンタクトレンズ)を使用し、就寝中に角膜の前面をわずかに平坦化させて光の屈折を調整します。
この変化は非常に繊細で、中程度の近視であれば角膜の10%程度の形状変化で矯正が可能です。
レンズを外した後もしばらくは角膜の形状が維持されるため、日中は裸眼でも良好な視力が得られることが大きな特徴です。
オルソケラトロジーによる矯正効果は一時的なもので、レンズの装用を中止すると角膜は元の形状に戻り、視力も徐々に戻っていきます。
大人のオルソケラトロジーの効果・メリット
オルソケラトロジーは、子どもの近視抑制治療として注目されやすいですが、実は大人にとってもメリットがある治療法です。
特に、仕事や日常生活で、眼鏡やコンタクトにわずらわしさを感じている方には有力な選択肢となる場合があります。
ここでは、大人がオルソケラトロジーを使用することで得られる主な効果やメリットについて紹介します。
視力回復効果がある
オルソケラトロジーは、角膜の形をレンズで一時的に矯正することで、近視や軽度の乱視を改善できる治療法です。
毎晩就寝時にレンズを装用することで、角膜の形が変化し、日中は裸眼でもクリアな視界が得られます。
手術を必要とせず、治療を中断すれば角膜は元の形状に戻るため、可逆性があり将来の選択肢が広がるのも大きな特徴です。
また、大人でも十分な視力回復が期待できるケースも多く、近視の進行が止まっている世代にも適した治療法といえるでしょう。
日中は裸眼で過ごせる
オルソケラトロジーは、日中に眼鏡やコンタクトレンズを必要とせず、裸眼で生活できる点もメリットです。
仕事中や通勤時、スポーツ、アウトドア活動などでレンズのわずらわしさがなく、快適に過ごせるでしょう。
特に、対人業務やメイクをする習慣がある方にとっては、視界の自由度が上がることで、生活の質の向上が図れます。
また、汗や水に濡れる状況でも支障がなく、レンズのずれやくもりを気にせず動くことができます。
大人のオルソケラトロジーの注意点・デメリット
大人のオルソケラトロジーはメリットがある一方で、注意すべき点もあります。
特に40代以降の方は老眼の影響や視力の安定性に配慮が必要で、使用方法や装用計画を個別に調整する必要があります。
また、レンズケアや定期検査を怠ると目のトラブルにつながる可能性もあるため、リスクを理解したうえで治療を選ぶことが大切です。
ここでは、大人のオルソケラトロジーの注意点やデメリットについて解説します。
40歳以降は注意が必要な場合も
加齢とともに、老眼の症状が出てくるため、40代以降でオルソケラトロジーを始める際は注意が必要です。
角膜の矯正によって遠くがよく見えるようになる一方で、手元の見えづらさが気になる可能性があります。
そのため、必要に応じて片目だけに装用するモノビジョン法や、矯正度数を控えめに調整する方法を用いる場合があります。
年齢や生活スタイルに合わせた最適な装用方法を医師と相談しましょう。
副作用・リスクがある可能性
オルソケラトロジーは医療行為であり、副作用や合併症のリスクもあります。
不衛生な使用や誤ったケアにより、角膜炎や角膜感染症、巨大乳頭結膜炎などのトラブルが起こる場合があります。
また、夜間に光がにじんで見えるハローや、光がまぶしく感じるグレアといった症状が出るケースもあり、特に夜間に運転時に影響を感じる方もいます。
ただし、これらの症状は多くの場合、使用を続けるうちに慣れてくるか、医師の調整により軽減できる場合が多いです。
重要なのは、定期的な検査と正しいレンズケアを欠かさず行うことです。特に大人は自己判断でケアを怠るケースが増えるため、自己管理が大切です。
免許更新の際に注意が必要
オルソケラトロジー治療中の方が運転免許を取得・更新する場合には、いくつか注意すべき点があります。
警察庁交通局運転免許課の通達により、たとえ視力検査で裸眼視力が合格基準に達していたとしても、オルソケラトロジーレンズを使用している旨を申告する必要があり、免許証の『条件等』の欄には『眼鏡等』と記載されることになっています。
これは、オルソケラトロジーが日中に裸眼で視力を得られるとしても、あくまでレンズによる一時的な矯正であるためです。
したがって、万が一視力が安定しない状態で裸眼で運転をしてしまうと条件違反と見なされ、違反行為として扱われるリスクもあります。
なお、眼鏡等の記載を免許証から削除したい場合には、オルソケラトロジーの使用を中止したうえで、裸眼での視力検査をクリアする必要があります。
オルソケラトロジーに向いている人・いない人
オルソケラトロジーは裸眼で快適に過ごせる、魅力的な治療方法ですが、すべての人に適しているわけではありません。
効果をしっかりと得るためには、目の状態やライフスタイルとの相性が大切です。
この項目では、どのような方がオルソケラトロジーに向いているのか、また反対に向いていない方の特徴について以下の表を用いて解説します。
区分 | 特徴 | 理由 |
---|---|---|
向いている人 | 軽度~中程度の近視・軽度の乱視のある方 | 強い近視や乱視には適さない |
6歳以上の子どもや若年層 | 目の成長期にある子どもは近視進行抑制効果が期待できる | |
定期的な検査に通える方 | レンズによる矯正のため、合併症リスクを防ぐには定期検診が必須となる | |
睡眠時間をしっかり確保できる方 | 最低6時間以上の装用が推奨される | |
スポーツやアウトドアを裸眼で楽しみたい方 | 日中に裸眼で過ごせる | |
向いてない人 | 妊娠中・授乳中、妊娠の可能性がある方 | ホルモンバランスの変化により角膜形状が不安定になる可能性がある |
屈折矯正手術を受けたことがある人 | すでに角膜が変化しているため、適応外となる可能性がある | |
円錐角膜や重度のドライアイ | レンズの使用にリスクがある | |
レンズケアを適切に行えない方 | ケア不良により合併症を引き起こす可能性がある | |
定期検診に通えない方 | 視力の変動や目の健康状態を把握できず継続使用のリスクが高くなる | |
睡眠時間の確保が難しい方 | 装用時間が不足すると効果が出にくくなる場合がある | |
常に安定した視力を求められる職業の方 | 一時的に視力が不安定になる可能性があり、業務に支障が出るケースがある |
適応外と思われるケースでも医師の判断によって治療可能な場合もあります。
自己判断で適応していないと思わず、眼科で相談し、適応検査を受けることが大切です。
大人のオルソケラトロジーの治療とは?
オルソケラトロジー治療は、視力矯正効果が期待できる一方で、専用レンズの装用や定期的な検査が必要となるため、治療の流れや費用について事前にしっかり把握しておくことが大切です。
ここでは、治療の流れと費用の目安について紹介します。
治療の流れ
オルソケラトロジー治療は、初診から定期的なアフターケアまで、いくつかのステップに分かれて進めていきます。
まず、適応検査を受けて、角膜の形状や近視・乱視の度合いなどから、レンズ装用が可能かどうかを判断します。
現在ハードコンタクトを使用中の方は、検査の際には1週間以上の装用中止が必要です。
適応と判断された場合には、テスト用のトライアルレンズを院内で一時装用し、目の状態やレンズとの相性を確認します。
その後、1週間ほどのお試し装用期間を設けて、実生活での見え方や装用感を体験できます。
お試し装用で問題がなければ、治療用レンズを正式に発注し、治療を継続するかどうかを判断します。
治療開始後は、1週間・1か月・3か月・6か月のタイミングで定期検診を受け、以降は3か月ごとの検診で視力やレンズの状態を確認します。
また、レンズ装着や取り外し、ケア方法などの練習も初期段階で指導を行うのが一般的です。
費用
オルソケラトロジー治療は、保険が適用されない自由診療のため、医療機関によって費用が変わります。
以下はオルソケラトロジーの費用の目安です。
費用項目 | 内容 | 金額 |
---|---|---|
トライアル費用 | 1週間のテスト用の費用 | 両目:55,000円 (検査・診察代5,500円 ケア用品初回セット費用5,500円含む) |
治療開始費用 | オーダーメイドレンズ代
1年間の定期検診費 破損交換保障(1回を含む) |
両目:175,000円 |
定期検診費用 | 3か月ごとの検診 | 1回5,500円 |
レンズ交換費用(2年ごと) | 使用レンズの交換 | 片目:44,000円 |
ケア用品 | 洗浄保存液、専用ケース、脱着用スポイトなど | 初回:5,500円(セット)
洗浄保存液:1本 1,100円・3本 2,970円 ケース:660円 スポイト:440円 |
トライアル費用は継続決定後に返金対応があるケースもあります。
また、価格や内容は医療機関により異なりますので、治療を受ける眼科で詳細を確認しましょう。
大人のオルソケラトロジーはいつまで続ける?
オルソケラトロジー治療は、大人の場合近視抑制効果はほぼないと言われ、治療の主な目的は視力矯正になります。
レンズ装用を続けている限りは日中の裸眼生活を維持できますが、装用をやめれば2週間~1か月程度で視力は元に戻ります。
そのため、いつまで続けるべきかと悩む人も少なくありません。
結論から言えば、いつまで継続すべきかという治療期間の判断は個人によって異なります。
日中裸眼で過ごせる快適さを選び、長く治療を継続する方もいれば、レンズの着脱やケアが負担になり中止を選ぶ方もいるでしょう。
このように、オルソケラトロジー治療は、個人のライフスタイルなどで治療期間が変わります。
また、オルソケラトロジー治療の継続に不安を感じる方は以下のような他の視力矯正治療も選択肢として検討することをおすすめします。
- レーシック:手術で角膜を削り視力を回復させる
- ICL:眼内レンズを挿入する
オルソケラトロジー治療は一生続けなければならない治療ではありません。
日常生活、年齢、ライフスタイルの変化に合わせて、他の治療法への切替も柔軟に対応できます。
継続を迷った際には、専門医に相談をして自分に合った治療計画を立てることが大切です。
まとめ
大人のオルソケラトロジー治療は、手術を伴わずに視力を回復できる選択肢として、日中を裸眼で過ごしたい人にとってメリットがあります。
一方で、40歳を過ぎると老眼の影響を受けやすくなることから、視力のバランスに注意が必要です。
また、毎晩の装用やレンズケア、定期検診などを継続できるかどうかも治療継続を検討する要因となります。
オルソケラトロジー治療は、人によって向き不向きがあるため、まずは眼科医と相談を行い、適応検査を受けて、自分に合っているかを見極めることが大切です。
『タワーリバーク眼科』では、子どもの近視抑制治療としてはもちろん、大人の方のオルソケラトロジー治療も行っています。
オルソケラトロジーが自分に合っているかわからず迷っている方や、興味のある方は、お気軽にご相談ください。