目頭が赤く腫れていたり痛みを感じたりしている場合、もしかしたら「涙嚢炎」かもしれません。
涙嚢炎を放置していると眼病の治療を受ける場合に問題があったり、手術時に思わぬリスクが高まったりする可能性があります。
また、涙嚢炎だと思っていたら違う疾患である可能性もあるでしょう。
この記事では、涙嚢炎とはどのような特徴や症状があるのか、涙嚢炎以外で目頭が腫れる疾患について紹介します。
目頭の赤い腫れや痛みがある方、涙嚢炎などの疾患について知りたい方はぜひ最後までご覧ください。
目頭が腫れる『涙嚢炎(るいのうえん)』とは
目頭が赤く腫れる場合、涙嚢炎(るいのうえん)の可能性があります。
まずは、涙嚢炎の特徴や原因、症状などを紹介します。
特徴
涙嚢炎は新生児と高齢者によく見られるもので、涙を鼻へ排出する涙道が詰まり涙が涙道の一部である涙嚢に溜まってしまい炎症を引き起こす疾患です。
涙は眼球の乾燥を防ぐだけではなく、栄養の運搬や異物の除去、感染症予防などの役割もあります。
この涙が涙嚢に溜まり、細菌が繁殖することで炎症が起きるのが涙嚢炎です。
原因
涙嚢炎のおもな原因は、涙道の一部にある鼻涙管がなんらかの理由で詰まってしまう鼻涙管閉塞です。
涙嚢炎は新生児と高齢者によく見られますが、それぞれ鼻涙管が詰まってしまう原因が異なります。
新生児の場合は、先天性鼻涙管閉塞といわれており、本来は消失するはずの鼻涙管を塞ぐ膜が残っていることで、鼻涙管が詰まった状態になることで涙嚢炎になります。
先天性鼻涙管閉塞は自然開通することも多いため、症状がひどくない場合には様子を見ることも多いです。
高齢者の場合は、後天性鼻涙管閉塞といわれており、加齢によって鼻涙管が狭まることが原因とされています。
ただ、先天性・後天性共に鼻涙管閉塞になる原因は不明である場合も多いです。
症状
涙嚢炎の初期症状としては、目やにや涙目、悲しくないのに自然と涙が流れてしまうなどがあります。
そして、涙嚢炎が進行すると目頭部分の赤みのある腫れや強い痛みがでてくるでしょう。
涙嚢が化膿して膿が発生している場合、目頭にある涙嚢部分を押すと膿や目やにがでてくる場合もあります。
涙嚢炎を放置すると急性涙嚢炎になることがあり、角膜を傷つけてしまうと角膜潰瘍を引き起こし最悪の場合は失明する可能性もあるため、放置は危険です。
検査方法
涙嚢炎の検査方法としては涙道閉塞の有無を確認するためのCT検査による画像診断や涙道通水検査のどちらかが行われる場合が多いです。
涙道通水検査とは、涙点から生理食塩水を注入して流れを確認する方法で、逆流した場合は鼻涙管閉塞であると確認できます。
逆流してきた生理食塩水の中に膿が多く踏まれている場合は鼻涙管閉塞だけではなく、涙嚢炎も合併している可能性が高いでしょう。
目頭部分に針を刺して膿を採取、細菌検査によって涙嚢炎の有無を調べることもあります。
治療方法
涙嚢炎の治療方法は、慢性涙嚢炎と急性涙嚢炎で異なります。
慢性涙嚢炎の治療方法として、抗生物質の投与や涙嚢を消毒液で洗浄などを行います。
ただこのような治療は一時的な改善は期待できるものの、根治(根本から完全に治すこと)は難しいです。
そのため、根治を目指すためには手術で涙嚢を取りだすか涙嚢から涙の道を作る方法しかありません。
慢性涙嚢炎を放置すると、急性涙嚢炎につながるだけではなく、失明の可能性もあるため根治を目指し、できるだけリスクを取り除いておきましょう。
急性涙嚢炎の治療方法としては、サルファ剤や抗生物質の投与、膿を取りだす排膿などを行い、まずは慢性涙嚢炎に戻すことから始めます。
そのあとは、上記の慢性涙嚢炎の治療方法と同様です。
涙嚢炎以外で目頭が腫れる疾患
目頭が腫れる疾患は涙嚢炎だけではありません。
ここでは、涙嚢炎以外に目頭が腫れる疾患を4つ紹介します。
眼窩脂肪ヘルニア
眼窩脂肪ヘルニアとは、本来眼球の奥にあるはずの脂肪細胞が目の前にでてきてしまう状態です。
両側の耳うえ側に生じることが多く、黄色い腫瘤性の病変が角膜の向こう側に透けて見えます。
時間の経過とともに、出てくる脂肪細胞の量が増えるため腫瘤性の病変は大きくなります。
症状
眼窩脂肪ヘルニアの症状は、殆どありません。
人によっては、少し異物感が生じる可能性はありますが、痛みなどはまったくありません。
ただ、ある程度症状が進むと眼球の横から黄色い脂肪細胞が見えてしまうため、見た目の違和感は大きいです。
原因
眼窩脂肪ヘルニアの原因は加齢である場合が多いです。
脂肪細胞は眼球を守るクッションとして存在していますが、通常は表に出てこないように脂肪細胞はせき止められています。
しかし、加齢によって脂肪細胞をせき止める力が弱くなることで、膨らみとして出てきてしまいます。
統計上では、体重の重い中年男性に多いとされます。
治療方法
眼窩脂肪ヘルニアの治療方法としては、表に出てきてしまった脂肪細胞の切除です。
点眼麻酔と結膜下(白目)麻酔を行ったうえで結膜の一部を切開し、脂肪組織を露出させたのち、切除摘出します。
結膜を切開し縫合するため、手術後はしばらくゴロゴロとした違和感が生じる場合があります。
しかし、多くは数日〜1週間程度で改善するでしょう。
腫瘍
目にできる腫瘍は眼腫瘍と呼ばれています。
腫瘍のできる場所 | おもな病名 | |
---|---|---|
眼球内腫瘍 | 眼球 | 網膜芽細胞腫(小児)
脈絡膜悪性黒色腫 眼球リンパ腫 など |
眼付属器腫瘍 | 眼球まわり | 眼瞼腫瘍
結膜腫瘍 涙腺がん 眼付属器リンパ腫 眼窩肉腫 など |
視神経腫瘍 | 眼の神経 | 神経膠腫
髄膜腫 など |
上記のように、眼腫瘍といってもどの部分に腫瘍ができるのかによって大きく3つに分類されます。
症状
眼腫瘍ができた際の症状は、早い段階で視力や見た目に影響が出るものなどさまざまですが、初期症状はあまりないことが多いです。
基本的な症状に関しては以下のとおりです。
- 目の異物感
- 視力低下
- 眼球突出
- 眼痛
- 涙が出る
- まつ毛の脱落
- 腫瘍部分の出血 など
腫瘍が小さいときはできものと間違われることも多く、腫瘍ができる場所によってはある程度大きくなるまで気付かないこともあります。
また、腫瘍の色も以下のようにさまざまです。
- 赤く柔らかい
- 黄色
- ホクロと似た黒や茶色系 など
ホクロやニキビに間違われてしまい、自分では判別が難しいです。
腫瘍には良性と悪性があり、殆どは良性ですがなかには悪性腫瘍ができている可能性もあります。
悪性腫瘍は皮膚表面に見られる傾向にありますが、ほかの病気と間違われやすいため自己判断はせず、できるだけ早く眼を受診しましょう。
原因
眼腫瘍の原因は現在分かっていません。
原因はさまざま考えられていますが、網膜芽細胞腫(小児)に関してはRB1遺伝子の異常と関連している点は分かっています。
また、眼瞼悪性腫瘍は高齢者に、眼部腫瘍は若年層に見られることが多いです。
治療方法
眼腫瘍のなかでも眼瞼や結膜にできた腫瘍は原則として手術にて切除される場合が多いです。
また、眼窩腫瘍も基本は腫瘍を切除しますが、場合によっては放射線治療を選択する場合もあります。
眼球内腫瘍の場合、腫瘍部分の切除ではなく眼球の摘出が最も安全な治療です。
しかし、視力の維持をしたい場合は放射線・抗がん剤・レーザー照射などを組み合わせながら眼球の温存を目指す場合もあります。
ただ、病状が進行すると眼球の温存が難しいだけではなく、他部位への転移の可能性もあるため、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。
結膜炎
白目の充血や目やに、かゆみなどがでた場合、まず疑われるのが結膜炎です。
目の疾患としてはかなりポピュラーであり、経験がある方も多いでしょう。
そんな結膜炎は、ウイルス性・細菌性・アレルギー性の3つに分かれており、ウイルス性と細菌性は感染性、アレルギー性は非感染性に分けられています。
どの種類の結膜炎かによって、症状や原因が異なります。
症状
結膜炎は、ウイルス性・細菌性・アレルギー性にわかれており、どういった症状がより強く出るのかが異なります。
それぞれの症状は以下のとおりです。
ウイルス性 | ・目の症状が特に強く、充血と大量の目やにが特徴
・最初は片目だけでも数日後には両目に症状がでることも ・子どもに多い咽頭結膜熱では充血や目やにだけではなくのどの痛みや39度以上の発熱、頭痛などの全身症状を伴う場合も ・流行性結膜炎では耳前のリンパ節の腫れを伴うことも |
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細菌性 | ・目の充血と黄色の粘りっぽい目やにが特徴
・目元以外の症状は殆どない ・最初は片目だけでも数日後には両目に症状がでることも |
アレルギー性 | ・両目におこり充血と強い時かゆみが特徴
・目の痛みや異物感、涙の増加が見られることも ・目やにはそれほど多くはない ・くしゃみ・鼻水・鼻詰まり・倦怠感・微熱などの全身症状を伴うことも |
ウイルス性やアレルギー性の結膜炎は目元の症状だけではなく、発熱や倦怠感など全身症状が出る場合があります。
そのため、結膜炎ではなく風邪などの別の疾患に間違われることもあります。
原因
ウイルス性・細菌性結膜炎の場合は、結膜炎を引き起こすウイルスや細菌が目に感染することが発症の原因です。
原因となる細菌やウイルスはさまざまですが、細菌であればインフルエンザ菌・肺炎球菌・黄色ブドウ球菌、ウイルスであればアデノウイルスなどが多いです。
細菌やウイルスが原因であるため、目元に触れた手やタオルなどを介して感染が広がる可能性があります。
特に、ウイルス性は感染力が強く、移りやすいとされています。
アレルギー性結膜炎は、アレルギーを引き起こす特定の物質に接触することが原因です。
アレルギーの原因は、人によってさまざまですが花粉症やハウスダスト、動物の毛などが多いです。
最近ではコンタクトレンズの装用でアレルギー性結膜炎を発症することもあります。
治療方法
結膜炎の治療方法は大きく、感染性(細菌・ウイルス)と非感染性(アレルギー)に分かれています。
感染性結膜炎は、抗菌や抗炎症の効果がある点眼剤を使用するのが基本です。
必要であれば、抗菌眼軟膏や抗菌内服薬を併用する場合もあります。
細菌性結膜炎では1〜2週間程度、ウイルス性結膜炎では3週間〜1ヶ月程度で完治します。
非感染性結膜炎は、かゆみの元になるヒスタミンという物質を抑制する、抗アレルギー点眼剤を使用する場合が多いです。
かゆみなどが強い場合は、ステロイド点眼剤を併用する場合もありますが、緑内障や白内障を誘発する可能性があるため、使用には注意が必要です。
むくみ
目元のむくみは、血液やリンパの流れが悪くなり、余分な水分が溜まることで起きます。
寝方や泣いたあとなど、目元にむくみがでたことのある方は多いかもしれません。
もしむくみが、目元だけではなく全身にでていたり、むくみの原因に心あたりがない場合は、腎臓などに問題がある可能性もあります。
症状
目元のむくみのおもな症状は、むくみによる違和感やむくみ具合によっては少し視界が遮られることもあるでしょう。
むくみ自体は危険なものではありません。
しかし、むくみ以外に息苦しさ・息切れ・動悸・胸の痛みなどがある場合は、むくみ以外の病気が隠れている可能性があるため、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。
原因
むくみのおもな原因は以下のとおりです。
- 塩分の摂り過ぎによる水分蓄積
- 副鼻腔炎
- 疲労
- 寝不足
- ストレス
- 涙
- 加齢
- 遺伝的な特徴 など
人によっては、遺伝的に目元がむくみやすい場合があります。
上記のような原因で目元がむくんでいる場合は、特に気にする必要はありません。
しかし、場合によっては目のむくみがある病気の症状の1つとなっていることがあります。
目元がむくむ病気には、甲状腺系疾患・腎臓系疾患・心臓系疾患などがあります。
むくみで病院に行くことは少ないかもしれませんが、一度診察を受けてもよいかもしれません。
治療方法
目のむくみの治療方法は、むくみの原因によって異なります。
加齢や遺伝的なものであれば、美容整形がおすすめです。
塩分の取りすぎに関しては、塩分摂取量を減らしたりカリウムを摂取して余分な水分を排出したりする方法があります。
別の病気の症状の1つとしてむくみが出ている場合は、根源となっている病気の治療をすることでむくみも改善するでしょう。
まとめ
涙嚢炎は新生児と高齢者によく見られるもので、涙を鼻へ排出する涙道が詰まり涙が涙道の一部である涙嚢に溜まってしまい炎症を引き起こします。
涙嚢炎のおもな原因は、涙道の一部にある鼻涙管がなんらかの理由で詰まってしまう鼻涙管閉塞です。
鼻涙管閉塞は、先天性・後天性に分かれていますが、どちらも原因は不明である場合が多いです。
目の腫れは涙嚢炎以外の疾患も考えられ、眼窩脂肪ヘルニアや腫瘍、結膜炎かもしれません。
大塚眼科クリニックでは、涙嚢炎など幅広い眼治療に対応しています。
土日祝日も診察を行っているため、平日は仕事がありなかなか受診できない方でも安心して受診できます。
JR川崎駅直結でアクセスしやすいため、目の違和感でお悩みの方はぜひ一度ご来院ください。