
「視力を回復させたいけれど、眼鏡やコンタクトレンズには抵抗がある」「昼間は裸眼で過ごしたい」という方に注目されているのがオルソケラトロジーという治療法です。
寝ている間に専用のハードコンタクトレンズを装用することで、日中は裸眼で過ごせるようになる近視矯正法で、特に子どもの近視抑制に効果が期待されています。
この記事では、オルソケラトロジーの仕組みから他の矯正法との違い、メリット・デメリット、治療の流れや費用相場までわかりやすく解説しています。
オルソケラトロジーがどんな治療法なのかわからないという方は、ぜひ参考にしてください。
オルソケラトロジーとは?
オルソケラトロジーは、就寝中に専用のハードコンタクトレンズ(オルソケラトロジーレンズ)を装用し、角膜の形状を一時的に矯正することで、日中は裸眼で快適に過ごせるようにする視力矯正治療です。
米国FDAおよび日本の厚生労働省の認可を受けた安全性の高いレンズが使われており、軽度~中程度の近視や一部の乱視に対応しています。
レーシックのような手術を伴わないため、成長期の子どもや、スポーツをしている方などにも適しているとされ、近視抑制の効果も期待されています。
また、オルソケラトロジーは治療を中断すると徐々に効果が薄れ、元の視力に戻るのが特徴で、継続的な使用が前提です。
オルソケラトロジーで近視矯正する仕組み
私たちがものを見る時、角膜と水晶体が光を屈折させ、網膜上に像を結ぶことで視界が形成されます。
しかし、近視の場合は焦点が網膜の手前で結ばれるため、遠くがぼやけて見えます。
オルソケラトロジーでは、内側に特殊なカーブを持つレンズを就寝時に装用し、角膜の前面にわずかに平坦化させることで光の屈折を調整し、網膜上に正しく焦点が合うようにします。
この角膜形状の変化は、朝にレンズを外してもしばらくの間保たれるため、日中は裸眼でクリアな視界を維持できるという仕組みです。
視力が安定するまでには数日から数週間程度かかることがあり、個人差もありますが、多くの方が日常生活に支障のない裸眼視力を得られています。
他の矯正方法との違い
オルソケラトロジーのほかにも、近視を矯正する方法はいくつかあります。
代表的なものは眼鏡・コンタクトレンズ・視力矯正手術で、それぞれに特徴があります。
以下にオルソケラトロジー以外の矯正方法別の特徴を比較した表を紹介します。
矯正方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
眼鏡 | 装着が簡単。目への直接の負担が少ない | スポーツに不向き。視野が狭くなることがある |
コンタクトレンズ | 視野が広く、外見を気にせず使える | 手入れが必要。ドライアイやアレルギーに注意が必要 |
視力矯正手術 | 恒常的な裸眼視力を得やすい | 手術のリスクがある。18歳未満は対象外 |
それぞれに特徴があり、ライフスタイルや目の状態に応じて最適な方法を選ぶことが大切です。
オルソケラトロジーのメリット・デメリット
オルソケラトロジーはメリットも多くありますが、治療を始めるにあたっては、いくつかの注意点や制限も存在します。
ここでは、オルソケラトロジーのメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
オルソケラトロジーのメリット
オルソケラトロジーのメリットは以下の4点が挙げられます。
- 日中は裸眼で過ごせる
- 手術をする必要がない
- 子どもでも治療が可能
- 近視抑制効果が期待できる
これらのメリットについて詳しく紹介します。
日中は裸眼で過ごせる
オルソケラトロジーは、朝レンズを外した後も矯正効果が一定時間続くことが大きな特徴です。
日中は眼鏡やコンタクトなしで裸眼のまま過ごせるため、見た目や装用感を気にせず快適な生活を送ることができます。
スポーツや屋外活動、水泳など、コンタクト装用が難しいシーンでもおすすめできます。
手術をする必要がない
オルソケラトロジーは角膜を削るような外科手術を伴わないため、目にメスを入れることに抵抗がある方でも始めやすい治療法です。
治療を中止すれば角膜の形状は元に戻るため、将来的な選択肢を残したい方にも適しています。
子どもでも治療が可能
小学校低学年(一般的に6歳以上)から治療が可能で、角膜が柔らかい年齢層ほど効果が出やすく、矯正の反応も良好であることが多いとされています。
眼鏡の使用を嫌がったり、スポーツなどで不便を感じる子どもにも適しています。
近視抑制効果が期待できる
オルソケラトロジーは、近視進行を抑制する効果が期待できます。
特に成長期の子どもにおいて、年々進む近視の進行を遅らせる効果が期待できる点は、保護者にとっても大きなメリットです。
オルソケラトロジーのデメリット
オルソケラトロジーには次のようなデメリットがあります。
- 視力を安定させるまでに時間がかかる
- 強度近視や強度乱視の場合は受けられない場合がある
- レンズのケアが必要
- 治療にはリスクもある
オルソケラトロジーのデメリットを詳しく以下で紹介します。
視力を安定させるまで時間がかかる
治療開始初期は視力が安定しづらく、日によって見え方にばらつきが生じることがあります。
多くの場合、数日から数週間の装用を継続することで安定しますが、最初のうちは夕方に視力が落ちるなど時間帯による差を感じることもあります。
強度近視や強度乱視は受けられない場合がある
オルソケラトロジーは、軽度から中程度の近視(-4.00D程度まで)が主な適応範囲とされており、以下の方は適応外となることがあります。
- 強度近視や乱視が強い方
- 角膜の形状に問題がある方
治療を希望する際は、眼科で相談や診察が必要なため、まずは受診することが大切です。
レンズのケアが必要
レンズは毎晩装用するため、使用後の洗浄や保管など、正しいケアを継続する必要があります。
ケアを怠ると角膜感染症やアレルギー性結膜炎といった目のトラブルを引き起こす可能性があります。
特に子どもの場合は、保護者の方がレンズの清潔管理をサポートすることが求められます。
治療にはリスクもある
まぶしさを感じやすくなるハローやグレアと呼ばれる現象が生じることがあり、特に夜間の視認性に影響が出る場合があります。
また、装用状況や角膜の状態によっては眼障害を引き起こすリスクもゼロではありません。
定期検診を欠かさず受けることが、トラブルの少ない治療を継続する鍵となります。
オルソケラトロジーの治療の流れ
オルソケラトロジーの治療は以下のような流れで行われます。
項目 | 内容 | 備考 |
---|---|---|
1.予約・検査準備 | 初診の予約を取る | すでにコンタクトレンズを使用している場合は装用中止が必要 |
2.適応検査・カウンセリング | オルソケラトロジーが可能かどうかを各種検査で確認 | 所要時間は約40~60分 |
3.トライアルレンズ装用 | 院内で短時間の試着と、1週間前後の自宅テスト装用 | 適応外の度数の場合、テストなしで本レンズを購入する場合あり |
4.レンズ効果確認・治療開始 | テスト装用で効果と安全性を確認した後、治療開始 | 正式なレンズを発注し、装用・取り外しのトレーニングを行う |
5.レンズケア指導 | レンズの洗浄・保存方法を指導 | 2~4週間ごとのたんぱく除去・消毒が推奨 |
6.定期検診・メインテナンス | 治療初日から定期的に通院 | 翌日・1週間後・1か月後・以降3か月ごとに診察が必要 |
7.治療の中断・終了 | 治療をやめたい場合はレンズを返却することで終了が可能 | 一度やめた場合でも、希望すれば再び治療を再開可能 |
装用を中止した場合は、2週間程度で視力が元に戻るのが一般的です。
オルソケラトロジーの費用相場
オルソケラトロジーの費用相場は一般的に以下のようになっています。
費用項目 | 内容 | 費用目安 |
---|---|---|
初期費用 | 適応検査・カウンセリング・テストレンズ貸出・ケア用品初回セットなど | 約55,000円 |
レンズ代 | オルソケラトロジー専用レンズ | 片目87,500円
両目175,000円 |
診察料 | 定期検診(初回1週間後、1か月後、以降3か月ごと) | 1回5,500円 |
ケア用品 | 専用洗浄液・ケース・装着スポイトなど | 月額目安約1,000~1,500円 |
レンズ交換 | 2年ごとの交換を推奨 | 片目44,000円 |
レンズの保障 | 処方交換:6か月以内
破損交換:1年以内 |
無償(各1回) |
オルソケラトロジーは保険が適用されない自由診療のため、費用は医療機関ごとに異なります。
医療費控除の対象になる場合もあるため、領収書を保管しておいたり、眼科で相談したりすることが大切です。
オルソケラトロジーについてのよくある疑問
オルソケラトロジーは新しい治療法のため、気になる点がある方も少なくありません。
ここでは、よく聞かれる疑問を取り上げ、わかりやすく解説します。
近視矯正効果の持続時間は?
オルソケラトロジーの視力矯正効果は、就寝中に専用レンズを装用することで角膜の形状を一時的に変えることにより現れます。
個人差はあるものの、初めて装用してから数時間で視力に変化を感じる方もいます。
ただし、治療初期は日中の後半にかけて視力がやや低下することもあり、安定した効果が得られるまでには1~2週間ほどかかる場合があります。
装用を継続することで、次第に安定して1日中裸眼で過ごせるようになる方が多いです。
痛みはある?
オルソケラトロジーに使うレンズはハードコンタクトレンズに近く、最初は異物感や違和感を覚える方もいます。
特に装用初期はゴロゴロする感じが気になるかもしれませんが、睡眠中の装用が基本となるため、起きている時間に感じる不快感は少なく済みます。
通常は数日〜1週間ほどで慣れますが、痛みや強い違和感が続く場合は、無理をせずに眼科へ相談してください。
向いている人・向いていない人は?
オルソケラトロジーは、すべての人に適している治療法ではなく、向き不向きがあります。
効果的な治療を受けるためにも、自分がオルソケラトロジーに適しているかをあらかじめ確認しておくことが大切です。
オルソケラトロジーに向いている人の特徴を紹介します。
- 軽度~中程度の近視や軽度の乱視がある方
- 6歳以上で眼の成長が進行中の子どもや若年層
- 手術をせずに視力矯正を希望する方
- 毎日6時間以上の睡眠時間を確保できる方
- 定期的な眼科検診を受けられる方
一方、オルソケラトロジーが向いていない人の特徴は以下の通りです。
- 強度近視・強度乱視の方(医師の判断による)
- 眼疾患(円錐角膜・重度のドライアイなど)がある方
- レンズケアが難しい方や衛生管理に不安がある場合
- 定期検診に通えない方・睡眠時間の確保が難しい方
- 職業上、日中の視力変化が許容できない方
治療の可否は医師による適応検査で判断されるため、自分に合うか不安という方も一度眼科での相談をおすすめします。
まとめ
オルソケラトロジーは、就寝中に専用のハードコンタクトレンズを装用することで、日中は裸眼で過ごすことができる治療法です。
手術の必要がなく、子どもの近視進行の抑制が期待できるなどメリットが多い一方で、対応できないケースや、毎日のレンズケアや定期検診が必要など注意点もあります。
オルソケラトロジーが自分に適しているかどうかは、まず専門医による適応検査を受けることが大切です。
『タワーリバーク眼科』では、近視抑制治療を行っており、オルソケラトロジーも取り扱っています。
視力回復や近視抑制に関心のある方は、ぜひ一度ご相談ください。