
ICL(眼内コンタクトレンズ)はメリットが多いことは知られていますが、デメリットもあります。
近視や乱視の方にとって、メガネやコンタクトレンズではなくICLで目が視力が良くなるのは魅力的と感じるでしょう。
この記事では、ICLがどのようなメリット・デメリットがあるのか、どのような方におすすめなのか、詳しく解説します。
ICLのデメリットについても知りたい方、ICL手術が受けられるのか心配な方は、ぜひ参考にしてください。
ICL(眼内コンタクトレンズ)とは
ICL(眼内コンタクトレンズ)とは、目の中にソフトコンタクトレンズに似た特殊なレンズを挿入して、近視や乱視、遠視などの屈折異常を矯正する治療です。
メガネやコンタクトレンズのような視力矯正とは異なり、一度挿入したら自分で毎日着け外しをする必要はなく、外れたり壊れたりする心配もありません。
角膜を削る手術ではなく、虹彩と水晶体の間にレンズを挿入する際に小さく切開する処置のため、負担が軽く済みます。
年齢や屈折度、他の目の病気、全身疾患などにも条件があるため、ICLを希望する方は適応条件を確認しておきましょう。
ICL(眼内コンタクトレンズ)のメリット
ICL(眼内コンタクトレンズ)は、コラマー(Collamer)という素材でできていて、生体適合性の高い素材で目の中で異物として認識されにくく、長期間レンズとしての機能を持続できます。
日本では有水晶体後房レンズとして、2010年2月に厚生労働省より認可を受けています。
(医療機器製造販売承認番号:22200BZY00001000)
レンズの入れ替えが可能
ICLは一度レンズを挿入すると、毎日のお手入れや取り外しは不要です。
それでいて、将来の目の病気になったり、ICLが合わなかったりした場合は、再手術により取り出して対応可能な可逆性があります。
レンズを取り出せばいつでも元に戻すことができるのは、ICLの大きなメリットのひとつです。
近視に戻りにくい
ICL手術は角膜を削らず形状を変えないため、近視の戻りが少ない治療です。
他の屈折矯正手術(レーシックなど)は角膜を削って視力を矯正しますが、経年により新たな乱視や近視になり見え方が変わってしまう可能性があります。
ICLはレンズを挿入するだけで角膜を削る必要はないため、手術後から年月が経っても近視に戻りにくく、見え方の変化も少ないです。
手術時間が短く負担が軽い
ICLは手術時間が短いため身体への負担が軽く、日帰りが可能です。
レンズを挿入するための切開創は約3mmと小さく、縫合しなくても自然に塞がります。
角膜を削らないため、術後の違和感やドライアイのリスクが少ない手術です。
適応範囲が広い
適応範囲が広いのも、ICLのメリットのひとつです。
近視、乱視、遠視などの屈折異常を改善でき、近視は屈折値-6.0D〜-18.0D(-15.0以上や-3.0~-6.0D未満の中等度近視は慎重対応)の高度近視、乱視は4.5D以内に対応できます。
ドライアイや視力の左右差があったり、レーシックの適応外だったりした方も、ICLなら治療ができる可能性があります。
紫外線から目を守る
ICLのレンズは光の反射を防ぐ特性があり、紫外線を約90%カットします。
UVカットのためにサングラスをかけている方もいますが、ICLはレンズを挿入するだけで紫外線を防ぐ効果が期待できます。
紫外線をカットすることで、白内障や角膜炎、加齢黄斑変性など、目の病気の予防にも有効です。
ICL(眼内コンタクトレンズ)のデメリット
メリットが多いICLですが、デメリットも存在します。
ここでは、ICLのデメリットについて詳しく解説します。
ハロー・グレア現象
ICL手術後に、ハロー・グレア現象を感じる方が多いのは、デメリットのひとつです。
光を見たとき周囲に光の輪が見える、にじんで見えることをハロー、光が過剰に眩しくギラギラして見えることをグレアと呼びます。
ハロー・グレア現象は夜に感じることが多く、車のヘッドライトや街灯などの光の見え方が以前と変わって見えます。
ハロー・グレア現象が起こっても、数週間~数ヶ月で気にならなくなることがほとんどですが、夜間の運転が危険なほどの症状が長く続く場合は、クリニックを受診して診断を受けましょう。
手術のリスク
ICLの手術は複雑なものではありませんが、手術である以上リスクを伴います。
手術後に細菌に感染して起こる感染症として、術後眼内炎がありますが、発症率は0.0167%(1/6,000例)との報告があります。
また、ICL手術後の合併症としては、以下のようなものが挙げられます。
- 角膜内皮細胞減少
- 眼球内出血
- 白内障の発症
- 眼圧上昇など
ICL手術によって上記のような合併症が起こる可能性は非常にまれですが、起こった場合は手術や処置をして対応が必要です。
特に、近視が強い方は緑内障になりやすいため、眼圧上昇が起こると緑内障のリスクが上がります。
自費診療のため費用がかかる
ICLは保険が適用されない自費診療のため、費用が高額になります。
使用するレンズの種類や、手術を受けるクリニックにより費用は異なりますが、一般的には片目で30~50万円が目安で、乱視用は追加費用が発生する可能性があります。
クリニックによっては検査費や術後の通院が提示費用に含まれている場合もあるため、総額の目安を事前に確認しておきましょう。
なお、ICLは医療費控除の対象で、確定申告により税金の還付が受けられます。
(参照:「医療を支払ったとき(医療費控除)」国税庁)
手術までに時間がかかることがある
レンズの在庫が国内にないと、取り寄せに時間がかかりすぐに手術ができない場合があります。
近視や乱視の度数やメーカーにより異なりますが、海外に発注が必要になると、1~3ヶ月かかるケースもあります。
ICLは適応検査をする時間もあるため、早めに検査を受けておくのがおすすめです。
ICL(眼内コンタクトレンズ)の合併症リスクを抑えるには?
ICL手術後の合併症は、確率は低くても起こり得ると考え、リスクを抑える工夫が必要です。
事前の適応検査や診断、カウンセリングをしっかり行い、ICLについてメリット・デメリットの説明を丁寧にする、信頼できるクリニックを選びましょう。
視力や目の状態の他、今までの目や全身の既往歴も詳しく聞き取り、ICL手術への適応を診断します。
ICL手術後のアフターケアとして、定期的な通院を続けるのも重要です。
視力回復や目の状態、合併症の兆候がないかなどを検査で確認することで、異常があった場合も早期に対応できます。
また、手術後に処方される目薬や抗生物質などの薬は、合併症を防ぐためにも用法用量を守り正しく使用・服用しましょう。
ICL(眼内コンタクトレンズ)を受けられない人・やめた方がいい人は?
ICLはレーシックと比較すると適応範囲が広いとはいえ、適応外や慎重対応とされる条件が定められています。
ここでは、ICLを受けられない、やめた方がいい方について、詳しく解説します。
未成年または45歳以上の方
ICLは、未成年または45歳以上の方は慎重に対応しなければならず、状態によっては受けられない場合があります。
未成年の方は成長期とともに近視が進んでいる可能性が高く、視力が1年以上安定しているという条件に当てはまりません。
親権者の同意があれば受けられるケースもありますが、成人して視力が安定するのを待つことが推奨されています。
45歳以上の方は老眼が始まる方も多く、ICL手術をすることで生活が便利になるのか、慎重に考える必要があります。
遠くを見る際は裸眼で、近くは老眼鏡で対応すると希望する場合はICLを選択することはできますが、加齢による白内障のことも考えておかなければなりません。
なお、老眼矯正用ICLもありますが、まだ日本では承認されていません(2025年時点)。
術後の安静期間が取れない方
ICL手術は日帰り可能ですが、術後の安静期間が必要なため、時間が取れない方は向いていません。
当日は手術前の診察や手術後の経過観察時間も含めて両目の場合でも約2時間で済みますが、帰宅後の入浴や洗顔などの制限があります。
視力が安定するまでに数日かかることや、感染症や合併症予防のためにも手術後1週間は安静が必要です。
軽い家事やデスクワークならばすぐに復帰できますが、力仕事や激しい運動の開始時期は医師とよく相談しましょう。
他の目の疾患や全身疾患がある方
ICLは、治療を受けられない(禁忌)とされている条件があります。
重度のドライアイ、初期の白内障は慎重対応、緑内障は種類や進行度によりますが、網膜剥離などの目の病気がある方は禁忌とされているため、ICLが受けられません。
高血圧や心疾患などは手術中のトラブルに対応するため、内科との連携が必要です。
コントロール不良の糖尿病、自己免疫疾患など、傷の治りに影響する可能性がある全身疾患がある方は、禁忌とされています。
また、アトピー性皮膚炎は目の周りに症状がなければ可能な場合もあるため、医師に相談してみましょう。
角膜の状態が規定に満たない方
ICLが可能な条件として、角膜の状態は明確な規定があるため、規定に満たない方はICLが受けられません。
角膜と水晶体の距離である前房深度が2.8mmより浅いと、レンズを挿入した際に目の中の水分の流れが阻害されるリスクがあるため、重要な条件です。
また、角膜内皮細胞密度が規定に満たない場合も、手術後の角膜の状態に悪影響があるため、ICL手術の適応外となります。
妊娠中または授乳中の方
妊娠中または授乳中の方は、ICL手術を控えた方が良いとされています。
手術中の血圧状態の悪化や、仰向け姿勢が母胎に影響がある可能性は否定できません。
ホルモンバランスの変化が大きく視力にも影響がある時期でもあるため、妊娠中または授乳中の時期を避けて、日常生活に支障がない時期にICL手術を計画することをおすすめします。
ICL(眼内コンタクトレンズ)がおすすめな人
ICLはデメリットもありますが、それを上回るメリットがあると感じる方も少なくありません。
ICLがおすすめなのは、以下のような方です。
他の方法で矯正が難しい方
メガネやコンタクトレンズでの矯正が難しい方は、ICLがおすすめです。
- 重度の乱視、強度近視(-6.0D以上)
- 角膜の状態などでレーシックの対象外
- ドライアイやアレルギーで通常のコンタクトレンズが装用できない
極端な屈折異常があると、メガネの場合は頭痛や目の痛みが起こったり、特別なレンズが必要だったりして矯正が難しい傾向があるため、ICLが向いています。
レーシックの対象外だった方も、ICLの適応条件に当てはまれば手術可能な場合もあるため適応検査を受けてみましょう。
ドライアイやアレルギーがあって、コンタクトレンズが装用できずにメガネで過ごしていた方は、ICLならば矯正可能なケースもあります。
裸眼で過ごしたい方
ICLの魅力は、今まで手間に思っていたメガネやコンタクトレンズから解放されて裸眼で過ごせることです。
メガネやコンタクトレンズが邪魔になってしまうスポーツや、荷物が増える旅行なども快適になるでしょう。
また、災害時にメガネやコンタクトレンズを持ち出せるとは限らず、非常事態に周囲が見えない不安が軽減できるメリットもあります。
可逆性を求める方
ICLは角膜を削らずレンズを挿入するだけの手術で、必要に応じてレンズを取り出して元に戻せる可逆性があります。
例えば白内障になって手術をする際には、ICLレンズを取り出すことができるため手術に支障がなく、治療の選択肢が狭まることもありません。
近視が進んで視力が変化したり、老眼になって見え方が変わったりしても、レンズの交換や取り出しができることで、スムーズに対応できるのもメリットです。
一定以上の視力が求められる職業に就きたい方
ICLは一定以上の視力が求められる職業に就きたい方に、おすすめです。
自衛官や警察官、消防士などの職業は、裸眼視力が基準に満たない場合でもICL手術で基準を上回れば応募できる場合があります。
ただし、航空自衛隊パイロット・戦闘機操縦士は原則ICLは不可とされているため注意が必要です。
一般旅客機のパイロットはICLの矯正視力でも応募が可能で、航空会社により規定がありますが、特定の検査やテストを受けて基準を満たせば航空身体検査に通ることができます。
ICL(眼内コンタクトレンズ)と他の治療法の比較
ICLとよく比較されるのはレーシックで、どちらも手術後裸眼で過ごせる屈折矯正手術です。
簡単にICLとレーシックの違いをまとめました。
ICL | レーシック | |
---|---|---|
手術方法 | 角膜を約3mm切開してレンズを挿入する。角膜は削らない | 角膜にレーザーを照射して角膜の形状を変形させる |
適応範囲 | 強度近視や重度の乱視にも対応。適応範囲が広い | 強度近視や角膜が薄いと適応外 |
安定性 | 視力が長期間安定する | 経年で近視が戻る可能性がある |
可逆性 | レンズを取り出せば元に戻せる | 角膜は元に戻すことができない |
費用(クリニックにより差がある) | 片目で約30~50万円 | 片目で10~25万円 |
他にも、寝ている間に特殊なハードコンタクトレンズを装着するオルソケラトロジーは、日中裸眼で生活できて角膜を削らない視力回復方法です。
オルソケラトロジーは角膜に癖を付けて焦点のずれを矯正する方法ですが、年齢に制限があったり、毎日の装着が必要だったりするため、長期使用するには慎重な検討が必要です。
また、眼内レンズを使用するという点で、白内障手術も同様に思えますが、手術方法が異なります。
白内障手術では、濁った水晶体を取り除いて眼内レンズを挿入する手術で、水晶体によるピント調整機能が失われます。
まとめ
ICLは長期的な視力の安定性が期待できることや可逆性があること、適応範囲が広いことなどメリットも多い治療ですが、検討する際はハロー・グレア現象や合併症のリスクのようなデメリットもきちんと理解しておく必要があります。
メリット・デメリットをよく考えて、自分にとってベストな治療を選び、視力を回復して快適に過ごしましょう。
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